梅茶翁(ばいさおう)|世界農業遺産の里山。能登町瑞穂集落にある農家民宿。

コラム

Column

forever indigo

8月の真っ只中、イギリスはデボンへ染め師としてのお呼びたてをいただいた。

その日を迎えるまでの数ヶ月は、遠隔にて膨大なやりとりを重ね、いざ飛び立ったはお盆直前。

大型台風が羽田を直撃する予定も吹き飛ばす勢いで、台風は目前となる前夜に進路を大きく変えて関西方面へ。

どうか無事であります様に、、、と、台風被害最小限にと祈りながらも、自身の飛行も無事であれと願った

のでした。上海経由の欧州は初めてで、とても刺激的。無事乗り換えも済んで、目指すはヒースロー。

長い飛行時間も高まる気持ちであっと言う間で、まもなく到着とアナウンスの頃、窓を開けると雲の上には

飛行機の影とその周りを包むように虹の輪。

ちょうどお盆も重なり、どこか見守られているように感じるのはスピリットがやはり日本人なのだろうか。

到着し、お迎えに来てくださっていたスタッフさんに案内されて、初めての寝台列車へ乗り継ぎ。

そう、ヒースローから更に5、6時間くらい先のところ。

朝方到着すると、オーガナイザーのyukiが車窓の外にて歓迎してくれた。

到着するやいなや、インディゴの栽培地視察へ農場を訪れたり、ワークショップの現場へ行ったりと

時差ボケもしている暇もないくらい、活動的な始まり。

農場は、なんと私の憧れでもあるオーガニックファームの経営する場所。

とても歓迎してくれて、今後そこでの栽培がスタートすることを思えば、とても楽しみで仕方ない。

今回、正藍染が途絶えそうな時にもひっそりと山奥でその種を繋いで来てくださった家系の方より

バトンが回ってきた種を、デボンへとまたバトンしたのでした。

こちらの風土にも適しているのか、先に送っていた種から見事に生育し、驚くほどの成長ぶりだった。

そして、また肝心の藍甕にも手直ししつつも見事に藍が立ち現れて来て安堵した。

会場となるヒラリーはバスケットメーカーのクラフトマン。

それも国宝級とも言える、センスそしてお人柄!

今回のご縁は私の上半期の人生の集大成とも、始まりとも言えるような大きな出来事、ギフトとなったのでし

た。始まっていくワークショップでは、ご参加くださったみなさんが熱心に取り組み、美しい染めが現実とな

って行き、また終わった後の笑顔がなんとも清々しい!

2日間に渡る染めワークショップを終えて、続くは講座ワークショップへ向かう数日となったのでした。

講座ともなれば、やはり染色家の方や、各分野のスペシャリストが集結し、熱量もさらにあがり

みな熱心に耳を心を澄ませて、集中集中の2日間となった。

本来ならば、10日間ほど欲しい内容を、2日間と言う限られた中でどこまでお伝えできるか、また

特有のニュアンスを英訳するにあたり、うまく伝わるかなども含めて、大きなチャレンジとなったのは

振り返っても震える程の出来事だったと思える。

化学染めが主流となっている昨今、現地でも、そして集まっていただいた方々もその様に化学的な染色の

方がほとんどだった。けれど、そんな真逆の世界観とも言える、ましてや藍の世界でもとんでもなく

難解な技法であるにもかかわらず、よくぞ参加表明くださったと、そこに感嘆してしまうのでした。

初日は、やはりどこか理解がしずらいのか、どうしても化学的な考えや意見も返ってきつつも、

2日目には、昨日のみなさんはどこへ?と言うほどに、溶け合うほどに理解が頭ではなく

感覚で分かり合えている様子。

私自身も、まるで私ではないほどに流暢な言葉がスラスラスラリと口から溢れてくる。

そう、乗っている!この感触はまるで舞台の様にあるゾーンに入る時と同じ様な感覚。

超えていける様な不思議な感覚にすっかりなっていたように思う。

2日間で、課題はあるにせよ、今持ち合わせている全てを出しきり、無事に結びとなった。

「発酵」と言うプロセスを通して、藍のもち備えている神秘や恩恵を、如何にお招きできるかが

鍵となるような、そんな世界へ皆と共に一歩歩ませていただいた実りある旅となった。

植物が森へ帰ろうとする自然的本能の様に、藍もまた、その本能の力のままに言葉を持たずして

帰ろうとしている氣がしてならない。

能登に移住し、梅と出会い、ここ梅茶翁とご縁が出来た流れより、藍の道へと導かれて行った不思議。

今回のデボンの旅を紡いで、この秋、能登でもいよいよ工房より飛び出して、土間にて

その藍に触れていただける機会を作ろうと、今、日々制作に取り組む日々。

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