集落のおじいさんおばあさんが大切に寄り添ってこられた梅の木たち。
そこを訪れた時から、すっかり梅に突き動かされる月日。
瑞穂の里山の奥に、美しい湧水、光、風、渡鳥や、日本ミツバチ、野生の生命たちと共に育まれてきた梅林が私たちの原点です。
長い冬にスローモーションの様にゆっくりと春へ向う準備をしては、春を知らせる吉兆花として凛と咲く姿やそこから漂う梅の花の香りで春が巡って来た事を知る。
夏は幽玄な梅林から蛍が舞い降りてくる景色も楽しみのひとつ。
青梅から樹熟し黄梅へ、また頬を赤く染めた実達も可愛らしく。
それぞれの収穫のタイミングで役割を持ち、逞しく美しく美味しく多様に私達の生命を繋いで来た保存食。
先人達の知恵の結晶。
「息合薬(いきあいぐすり)」と呼吸を整え、心身を爽快にするものとして昔は必需品だったそうです。
梅茶翁での梅干し作りでは、奥能登の塩をブレンドし、昔ながらの塩分濃度20%以上でしっかり梅と合わせ、天日干しと夜露にあてる事を繰り返し甕にしまいます。
長い年月しっかりと保存、熟成されそれはまさにお薬の役割とも思える働きになる。
梅干し・梅肉エキス・梅ジュース・梅の黒焼・梅酢・梅酒・梅の漬物などなど、さまざまなバリエーションに加工が出来、単独では強烈な個性を持っていながら脇役になれば、同化して個性を失わず、主役の本質を引き立て役目を全うします。
主役も脇役も務まる食品はなかなかありそうでない特別な存在です。
見守る様に私達はこの梅林へ続く道が途絶えない様に、ささやかながらお手伝いをさせていただけたらと思います。
これからも未熟ですが梅を愛する気持ちだけは持ち続けたいと思っています。